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前未来的語り部

懐かしい現在

佐々木の部屋

新聞の広告欄を見て尋ねた「佐々木の部屋」。そこには何人かの「ささきさん」がいて、その中から一人を選ぶのだ。

 

①クリエイティブなささき

②怠惰なささき

③スポーティーなささき

④ブリーダーなささき

……

 

私は、①を選んで番号に丸をつけ、受付の女性に提出した。

5分後、私の名前が呼ばれ、①の部屋に入った。そこには丸いテーブルが一つ置いてあり、一人の男がコーヒーを飲みながら私に笑いかけ、席に座るよう合図された。

 

そこで目が覚めた。

私は精神病を患いながらもなんとか塾講師を続けている。

今日は佐々木が教室に来る予定の日だ。彼の担当している生徒はあまりに多い。ある時は成績優秀にも関わらずクラスに馴染めない中学男子。ある時は、思春期のまっただ中、恋に恋した騒がしい女子高生。ある時は、勉強が嫌いでチェスにしか興味が湧かないという小学生の男の子。

僕は彼らが佐々木の授業を受けている時の目の輝きを見て、寒い日に遭難している時、小さな明かりのついた小屋を見つけたときの人の表情を思い浮かべることがある。

どこからどこへ行けばいいのか。それが見えなくなった者にとっての止まり木のような男である。

やがて、講師の中でも彼に相談を持ちかける者が現れ始める。彼の「わかる」は大人だろうと子供だろうと関係がない。わかる者はわかるのだ。

ブースの机に散らばった消しゴムのかすを無駄のない動きで手早く集めてゴミ箱に捨てた後、彼は年下の大学生講師の男と話始めた。

「あの後どうなった?」と佐々木。

「うまくいきました!彼女は完全には納得していませんけど、分かってはくれたみたいです。」大学生講師が答える。

「そうか、それはよかった!また何かあったら言ってね」

「それなんですけど、今度はまた別の問題が…」

 

佐々木の部屋には、人が尽きない。