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前未来的語り部

懐かしい現在

ならば、街コンへ行こう。

 僕は恐らくINFP型の女性に宿命的な恋に落ちる傾向にある。これはもう傾向で、自分ではどうにも変えられないことなのだ。どんなに違う方向へ行こうとしても、彼女らの方向に強い風が吹き、そちらに身体が吸い寄せられてしまう。

 僕はよく「感性の合う女性」という表現をするが、それはNF型のことを指しているのかもしれない。現実空間とは違う、別のトンネルでつながっている感覚がある。そのトンネルこそが物語であり、そこに「運命」という名札がつけられる。
 運命は後付けと言われれば確かにそうなのかもしれない。トンネルがあればどのような形でだってそれはコーディネートされる。でも、トンネルは自分で作ることはできない。入り口があるかどうかですらない。トンネルの存在自体が「与えられたもの」なのである。ないときはないし、あるときはあるものだ。
 トンネルがつながったときこそが「言葉に関わって生きていきたい」という言葉を生んだ。僕が「文学的な感性」と表現したのはINFP型の感性のことだ。INTJ型の女性とは「理論的な感性」が合う。だから彼女とはとても良い友達になるが、互いの精神に独特な形でくりぬかれた穴ぼこを補完し合う関係にはならない。僕が欲しているのは「文学的な感性」でつながれる女性なのだ。
 そして、僕の願いの投影した最も象徴的な言葉こそが「言葉と関わって生きたい人間」なのだ。僕は理屈でなく、もっと芸術的でつかみ所のない抽象的な感性を自分に対しても相手に対しても重視しているらしい。それはインスピレーションと一般的に呼ぶものなのだろうか。
 
 さて、僕の求めている女性像は少しばかりはっきりと見えてきた。でも、それで答えが出たと満足していたら、作家としても男としても人間としてもこれ以上先には進めない。問題は、僕が何を求めているか以上に、彼女らが何を求めているかということなのだから。
 一体彼女たちは、何を求めているのだろう?
 三人のうち二人は寛容な人だった。一人は寛容な人ではなかった。この違いが決定的な差を生み出しているのだろうか。トンネルは確かに存在していてこちら側の入り口は開いていたのだが、あちら側の入り口が閉ざされていた。

 そもそも恋愛は要素が多すぎる。外見・ステータス・立場・タイミング。例えば、弱っているところを優しくされるだけでも惚れるかもしれないし、逆に自分を傷つけるような人のことを好きになることだってある。問題は如何に自分を偽って相手を惹き付けても、そのあとの関係性は続かないということだ。だから、自分は自分らしくするのが一番良くて、そのためには自分の人生をしっかりと進めることが必要なのだ。

 というのも、一つ前の考え方。それで答えが出たのならなぜ僕は街コンなんかに行くかなきゃならないだろう? 今は本当に自分らしい状態だ。目標もぶれていないし、日々そこに向かって近づいている。以前の考えならば、僕はもう「心から惹かれ合う恋人」に出会えているはずだ。こちらのフォームはもう洗練されている。この状態で何も変わらないのであれば、環境の方を変えてみる必要があるのではないだろうか。もちろん今後、作家として成功したり会社を開業したりすれば環境は大いに変動するだろう。
 だが、それまで一体どれだけの時間待っていればいいのだ。そんなに待っていたら僕はずっと我慢し続け、「理想の恋」に縛り付けられてしまうだろう。そして、それに裏切られることに対して理不尽な怒りを覚えるだろう。そんな不健全な状態はない。誰にとっても良いことではない。今必要なのはもっと「フィジカルな恋」なのだ。「メンタルな恋」は一旦お休み。そう休もう。大きな物語を一旦止めよう。止めるには次の一手を打つしかない。
 ここで物語を終わらせるわけでは決してない。今後はもう運命的な出会いを捨てるとか、結婚相手は誰でもいいとか、投げやりな姿勢になったわけではない。これは小説を書くときと同じなのだ。小説が書き終わって一段落ついたら一旦それを寝かす必要がある。でも、ただ引き出しにしまうだけでは結局また考えてしまうので、別のことをする。「物語から離れること」ということを意識的に行う。
 だから僕は街コンへ行く。物語を寝かせに。しばらく必要な期間物語を寝かせたあとにはきっと、これまで描き出された物語を客観的な目線で見ることができるようになっているはずだ。何が不要で、どこに力を入れすぎていて、思い入れが強すぎるが故にリズムを切り、入り口を狭めていたか。反対に、その中で本当に必要なものはなんだったのか、どこを残すべきで、どこをさらに輝かせるべきなのか。本当に美しい部分は一体どの流れにあったのか。
 これは物語を捨てにいくのでなく、物語をさらに充実したものにするための行動だ。今、きっと僕の頭は正常ではない(正常ではないのだろう)。いくら考えても、いや考えれば考えるほど作者は「読者の目線」から乖離していく。現状とれる最善策は「休みをとること」。彼女たちが求めていたことは、きっとそのあとクリアに見えてくる。
 ならば、街コンへ行こう。